岸田首相の米国訪問に思う
岸田首相が米国に国賓として招かれ、日米や周辺国との関係強化に努めておられます。今回私が非常に感心したのは、岸田さんのスピーチです。議会でのスピーチと晩さん会でのスピーチを両方聞きましたが、いずれも内容も発音も相当お上手だと思います。特に晩さん会でのスピーチは、ご自身が広島出身であることを強調しそれにまつわる日米の関係について触れ、そしてもちろん「原爆」には触れないのですが、「ヒロシマ」というテーマで話し始めたときに多くのアメリカの人は相当身構え、ハラハラしたのではないでしょうか。しかし最後まで笑みを絶やさず、協調と友好を深めるメッセージで締めくくることで、正義と平和の希求というテーマを強く織り込ませた内容となったと思います。また、岸田首相のスピーチは、議会でも晩さん会でのでもご覧になった方は感じたと思いますが、とにかく爆笑の渦です。スピーチライターが相当優秀なのだと思いますが、やはり「笑い」をとることの効用はこういう場面では極めて大きいです。そして、内容もさることながら、岸田さんの優れていたところは、その表情にあります。きちんと振り付けされて練習されたのだと思いますが、終始満面の笑みを絶やさず、余裕を感じさせるスピーチでした。こういうのは確実にあちらのかたがたには受けると思います。
実は首相は「練習熱心」なことでも知る人ぞ知るかたです。今回はスピーチが二つ。さぞかし、大変だっただろうと思います。原稿があったとしても棒読みにならずちゃんと聴衆に語り掛けるように笑顔を満たして話す。前回訪米時のNYエコノミッククラブでのスピーチも相当よかったと思いますが、その時随行された某庁の偉い方からその時の首相の様子について聞かせていただいたのですが、とにかくずっと直前まで練習してました、ということでした。今回もかなり直前まで練習していたとか。
内容についてですが、議会でのスピーチのほうは文字起こししたものを読んでみるとかなり地政学問題と日米関係強化に紙幅を割いています。もう少し具体的に言えば、日本とアメリカとの軍事同盟の強化。首相は広島出身であることをこの議会スピーチでも使っていますが、原爆という言葉は当然のことながら一回も使っていません。むしろ認識として「これまでの米国の犠牲と献身の上に成り立っている(日本の安全も含めた)平和」という認識を明確に表明していること、「現実主義者」と自己評価していること、「自衛隊」と「米軍」の隊員たちが侵略阻止のために足並みをそろえて努力してくれている事実の上に日本の繁栄が成り立っていることなど、今後韓国、インドやフィリピン、オーストラリアなども含めた議論のなかで「中国」「ロシア」という異なる価値観の国々への協働した対応を強めていくことを明確に表明している。
そして何よりも首相のスピーチの大半がこの軍事、安全保障面の内容に割かれていたことが、強烈です。経済よりも今の問題意識はそこにある、ということの表明でした。あえて広島出身であることに触れたのは「ヒロシマ」がもはや日本の今後にとって取るべき対応の制約にはならないのだ、という強いメッセージとワタクシはうけとめました。
「今の私たちは、平和には「理解」以上のものが必要だということを知っています。「覚悟」が必要なのです。」というスピーチの一節は、国民としても非常に重く受け止めるべきでまさに(どちらの意味でも)覚悟をもつべき時期には来ているだろうと思っています。
なお、余談ですが、今回の米国訪問には首相夫人も同行され、単独でホワイトハウスにバイデン大統領夫人(博士号を持っているので、岸田首相は晩さん会ではミセスではなくドクターと呼んでいました)を訪問し2時間も滞在するなど、積極的なファーストレディ外交も行われています。ご存じの通り、こうしたトップの配偶者やパートナー同士のつながりを深めることはとても重要です。実際、国のトップであっても配偶者やパートナーにいろいろな重要なことを相談したり意見を聞いたりすることはあると思われるので、こういう関係づくりは一種のフェイルセーフとして機能する場合もあると思います。サミットなどでも配偶者やパートナーが同行しているはずです。
ところでこの夫人のホワイトハウス訪問のニュースはYou Tubeで見たのですが、それに寄せられているコメントがあまりにもひどくてちょっと失望しています。夫人は私人だから税金で海外旅行しているのはけしからんみたいなそんなコメントが多数を占めているんですね。
https://www.youtube.com/watch?v=-ro8MgJtkbs
そもそも「私人」だとか「税金の無駄遣い」とかいう発言が出てくること自体が、中学生レベルの知識すらないことを暴露しているわけなんですが、何も知らない阿呆でも、キーボードや液晶画面に適当に触れたら活字に変換されて文が作れてしまう(文章が作れるとは言っていない)。これがいまの悲しい現実です。インターネットやSNSの最大の罪というか欠点はあまり物事を深く考えない人々にも簡単に活字の形で意見を表明できる機会を与えてしまったことでしょうね。そしてそういう人々が群れて「炎上」させたり、妙な政党に議席を与えてしまったり・・・どこかで何とかしないと、ヒトラーや毛沢東が出てきそうで怖いです。
現在の内閣や首相の支持率はほぼ最低レベルです。個人的にも資産運用立国のアプローチなどについてはやや外資寄りに傾きすぎており、バランスがわるいとおもいますが、個人的には全体としてはまあよくやっているほうじゃないか、という評価です。集団は間違った判断をしがちだと思っていて、歴史的にも集団的に熱狂的に支持された政治がだいたいとんでもない悲劇を巻き起こすことのほうが多いのですが、今の岸田さんの人気のなさは先ほど書いたようなSNSなどの欠点を考慮した場合、むしろ「良いこと」なのかもしれないな、という感覚を少なからず持っています。
実は首相は「練習熱心」なことでも知る人ぞ知るかたです。今回はスピーチが二つ。さぞかし、大変だっただろうと思います。原稿があったとしても棒読みにならずちゃんと聴衆に語り掛けるように笑顔を満たして話す。前回訪米時のNYエコノミッククラブでのスピーチも相当よかったと思いますが、その時随行された某庁の偉い方からその時の首相の様子について聞かせていただいたのですが、とにかくずっと直前まで練習してました、ということでした。今回もかなり直前まで練習していたとか。
内容についてですが、議会でのスピーチのほうは文字起こししたものを読んでみるとかなり地政学問題と日米関係強化に紙幅を割いています。もう少し具体的に言えば、日本とアメリカとの軍事同盟の強化。首相は広島出身であることをこの議会スピーチでも使っていますが、原爆という言葉は当然のことながら一回も使っていません。むしろ認識として「これまでの米国の犠牲と献身の上に成り立っている(日本の安全も含めた)平和」という認識を明確に表明していること、「現実主義者」と自己評価していること、「自衛隊」と「米軍」の隊員たちが侵略阻止のために足並みをそろえて努力してくれている事実の上に日本の繁栄が成り立っていることなど、今後韓国、インドやフィリピン、オーストラリアなども含めた議論のなかで「中国」「ロシア」という異なる価値観の国々への協働した対応を強めていくことを明確に表明している。
そして何よりも首相のスピーチの大半がこの軍事、安全保障面の内容に割かれていたことが、強烈です。経済よりも今の問題意識はそこにある、ということの表明でした。あえて広島出身であることに触れたのは「ヒロシマ」がもはや日本の今後にとって取るべき対応の制約にはならないのだ、という強いメッセージとワタクシはうけとめました。
「今の私たちは、平和には「理解」以上のものが必要だということを知っています。「覚悟」が必要なのです。」というスピーチの一節は、国民としても非常に重く受け止めるべきでまさに(どちらの意味でも)覚悟をもつべき時期には来ているだろうと思っています。
なお、余談ですが、今回の米国訪問には首相夫人も同行され、単独でホワイトハウスにバイデン大統領夫人(博士号を持っているので、岸田首相は晩さん会ではミセスではなくドクターと呼んでいました)を訪問し2時間も滞在するなど、積極的なファーストレディ外交も行われています。ご存じの通り、こうしたトップの配偶者やパートナー同士のつながりを深めることはとても重要です。実際、国のトップであっても配偶者やパートナーにいろいろな重要なことを相談したり意見を聞いたりすることはあると思われるので、こういう関係づくりは一種のフェイルセーフとして機能する場合もあると思います。サミットなどでも配偶者やパートナーが同行しているはずです。
ところでこの夫人のホワイトハウス訪問のニュースはYou Tubeで見たのですが、それに寄せられているコメントがあまりにもひどくてちょっと失望しています。夫人は私人だから税金で海外旅行しているのはけしからんみたいなそんなコメントが多数を占めているんですね。
https://www.youtube.com/watch?v=-ro8MgJtkbs
そもそも「私人」だとか「税金の無駄遣い」とかいう発言が出てくること自体が、中学生レベルの知識すらないことを暴露しているわけなんですが、何も知らない阿呆でも、キーボードや液晶画面に適当に触れたら活字に変換されて文が作れてしまう(文章が作れるとは言っていない)。これがいまの悲しい現実です。インターネットやSNSの最大の罪というか欠点はあまり物事を深く考えない人々にも簡単に活字の形で意見を表明できる機会を与えてしまったことでしょうね。そしてそういう人々が群れて「炎上」させたり、妙な政党に議席を与えてしまったり・・・どこかで何とかしないと、ヒトラーや毛沢東が出てきそうで怖いです。
現在の内閣や首相の支持率はほぼ最低レベルです。個人的にも資産運用立国のアプローチなどについてはやや外資寄りに傾きすぎており、バランスがわるいとおもいますが、個人的には全体としてはまあよくやっているほうじゃないか、という評価です。集団は間違った判断をしがちだと思っていて、歴史的にも集団的に熱狂的に支持された政治がだいたいとんでもない悲劇を巻き起こすことのほうが多いのですが、今の岸田さんの人気のなさは先ほど書いたようなSNSなどの欠点を考慮した場合、むしろ「良いこと」なのかもしれないな、という感覚を少なからず持っています。
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