アメリカにおける賭博雑感

大谷選手関係で一気に話題になりました。個人的には賭け事は嫌いではない(好きだとは言っていない)ですが、自己分析を冷静にして、ちゃんと撤退できないという自覚があれば決して手を出してはいけない類のものであろうと思います。ギャンブルには依存性があり、脳のどこかを麻痺させて行動している面があると思っています。

米国でもギャンブルは原則的には推奨されていません。ネバダ州のラスベガスはカジノで有名ですが、(私は直接確かめたわけではありませんので自信はありませんが)昔法学部時代に教えを乞うた比較法学の大家からが、「アメリカは昔原則的に離婚が認められなかったが、ネバダ州は当時アメリカの中で唯一州法で離婚を認めていて、属地主義によって何週間か滞在したら裁判管轄権を認めてくれて離婚裁判ができた。だから離婚したい多くのキリスト教徒がネバダ州の州都リノに向かったが、砂漠のど真ん中で何もないので、滞在する人のための娯楽施設を作ることになり、それがカジノを含む一大拠点に発展した」という話を聞いたことがあります。もともと入植当時のアメリカ人ってめちゃくちゃまじめだったと思いますし、文化的にはそういう面が残っているとは思います。いまでは多くの州では一定のギャンブルは認められていますが、カジノの開設については、まだそれほど寛容ではないと思います。一つには東海岸にやはり真面目なピューリタン気質が残っている面があるということ、もう一つは米国の先住民族対策として、一定の特権を与える反対側としての一般的な制限を設ける必要があるということでしょう。

アメリカ本土を旅すると、ときどき「ど」のつくような田舎で「あれ?なんでこんなところにカジノが?」という光景に出くわします。そのカジノはだいたいアメリカの先住民対策として特権的に認められているカジノです。一種の補助金政策といえます。逆に、ご存じの通りマンハッタンにはカジノはなく、やりたい人は対岸のニュージャージーのアトランティックシティーに行きます。この点はやはり州ごとに規制が異なるということが色濃く出ています。

で、こういう背景があるので、規制の緩い州と厳しい州との間で規制のアービトラージがしばしば行われる。特に現在のようにインターネット等で容易に州境、国境を越えてしまう取引が可能になることで、ある州がせっかく厳しく規制していても、他州で実施されているオンラインカジノなどに容易に参加できます。州ごとの規制の仕方はよくわかりませんがどちらにしてもこういうギャンブル系の資金はマフィアなどの資金源になりやすいのは昔から同じであり、国家としては厳しく目を光らせます。そして、上記の性質上常に州際問題となる可能性があるので、FBI(連邦捜査局)が出てきます。まさに今回FBIが捜査に入っているというのはそういうことだと思います。
今回の事件は多くの州で認められている「スポーツ賭博」案件であり、MLBもどちらかというとそうしたビジネスを支持する側にいるという側面もあるようです。また、そもそも通訳の方ももちろん大谷さん本人も、「違法だということを知らなかった」のではないかともいわれていて、たいしたことにならないという見方が多いと思えました。ほんと、大したことにならないことを祈ってます。
が、今回の事件は日本でやや楽観的に伝えられているほどには楽観視できないと思っています。つまり、なぜ問題となったかというと、大谷選手の口座から違法賭博の胴元への送金が行われているという事実がどうもあるらしいからです。通常口座の資金移動は当然のことながら本人かその代理人が行います。伝えられている限りにおいては、さすがに通訳の人に資金まで自由にする権限は与えていなかったようなので、大谷選手が自らの意思で違法賭博の胴元に送金した、ということになります。これ自体が結構アウトに近いのではないか、ということ。そもそも、通訳から話を聞いて事情を知ったうえで送金しているということも、まずいと思います。日本でいう反社との取引ないしはマネロン関係の問題も絡んでくるかもしれません。

それゆえ、関係者で協議してストーリーを練り上げ、通訳による「窃盗」にしようとしているようですが、それでも口座間の資金移動は覆い隠せないのであって、しかも事実が生じてから半年後にFBIが動き始めてから初めて球団も知ったということなら、黙っていた大谷さんはちょっと申し開きしづらくなってしまうかもしれません。せめて通訳本人の口座を経由していれば、まだ良かったのかもしれないとは思いますが。

たぶん、正解は、大谷さんが通訳から事実を知らされた段階で、球団に伝えて協議し、世間にぶちまけて処理をするということでしょう。ただ、おそらく当時は移籍の話がまだ十分に固まっていなかったのかもしれません。あるいはすでに移籍の契約を交わした後で、相談すべき相手がどこなのか、さすがに新球団には相談できなかったのか、という問題もあったのかもしれません。

それにしても、金額もでかいので、通訳の信用だけでそこまで負債が膨らむのかという別の疑問も生じてきます。また、身体的な危害といった脅迫が絡んでいた可能性も否定できません。

大谷選手は野球にそれほど興味がないワタクシからみてもめちゃめちゃすごい人であり、性格もいい。しかし、法律に違反することとそれとはまた次元の違う話なのでこれから厳しい状況に置かれるかもしれません。球界の宝ものであり、日本人としての誇りでもあるので、早く問題がすっきりして、憂いなくプレーで活躍してもらいたいと思っています。

それにしても、三菱UFJ銀行さんはすでに大谷選手起用のコマーシャルを保留にしているという素早い対応で、さすが元MUFGの米州リスク統括だった頭取の仕事は早いな、と別の意味で感心しています。米州でのこうした問題の重大性をよく理解されているからだと思いますが(最後は強引に金融リスク管理ネタに持ち込んでしまった・・・)。

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