来年の株式相場

今年も大変お世話になりました。なかなか最近は諸般の事情で記事が書けなくなっていますが、来年も機会を見つけてメモを残していきたいと思います。

本日12月29日日経新聞朝刊の株式欄はいろいろ面白かったです。

まず、「22年の日本株アクティブ投信」という見出しで今年は「機械的運用」が成績上位を占めるという副見出しだったが、リストを見ると何のことはない「高配当株ファンド」のオンパレードであり、要するに高配当株運用が結果として株価が上がれば売り下がれば買うという行動に出やすいというだけで、見出しとしては高配当株ファンドがよかったということでもいいんじゃないかなとは思いました。(配当がボックス相場や若干の弱気相場でバッファーとなりやすいという面もあると思います)。

もう一つの大きな記事「「配当は死守」銘柄に買い」も配当という切り口でみればおそらく同じ記者さんの記事かなとおもいます。業績悪化で割安な株価となっていながら「配当死守」がうかがわれる企業の株式に注目が集まっているということですが、まあ上の記事と根っこは同じように思います。

次に大機小機。「アクティブ運用、期待と課題」ということで、モーニングスターの朝倉社長もツイッターでクウォートされていましたが、ボックス相場や調整局面においてアクティブがベンチマークに勝ちやすいという傾向があるという記事の内容を踏まえ、「アクティブ運用が高い信託報酬に見合ったリターンを上げられるか。長期運用に耐える運用哲学を有しているのか。来年はアクティブ運用の復活に向けて運用会社の真価が問われる」という部分を強調されているのはまさにその通りだと思います。

今回の大機小機は、インデックス運用化が進むことによるボラティリティの増大についても警鐘を鳴らしているようで、この部分についてはワタクシなりにも考えてみました。
何度か、ここでも書いてきた通り、ワタクシがパッシブ(インデックス)運用ばかりがもてはやされる状況を憂うのは、その行き過ぎが市場機能を壊してしまっているからです。本来株価というのは個別企業の評価であり、それの集積がインデックスなのですが、時価総額ベースのインデックスの場合、それを取引するということは個別企業の評価に関わらず時価総額に従って構成銘柄を買いあるいは売るという作業を行うことになります。本来経済の健全な発展のためには良い企業が評価され悪い企業が淘汰されるという選別が必要だと思うワタクシにとって、こうした「ミソもくそも」一緒くたに売り買いするインデックス運用は余り主流となってほしくないのです。ところが、日銀のETF買いやカネ余りなどがドライバーとなりここ10年ぐらいはインデックス全盛といっていい感じで、金融庁さんも最近ではインデックス運用の記事を書くブロガーさんを呼んで意見を聞いたりとか、やたら偏った行動まで目につき始めていて、これはいかんなぁと。別に嫉妬しているわけではなく、単に手数料が安く結果として顧客の収益に貢献しやすいというだけで、当局がインデックス運用が優れていてアクティブはクソだとか(まあそこまで言ってませんが)そんな短期的視点での価値判断しちゃまずいだろうと思うわけです。手数料の高さは、大げさに言えば日本経済の将来にむけてのコストであり、その発展のための必要なコストはぜひ払っていただかないと、たぶん市場そのものがインデックス化の行きすぎによって逆に機能しなくなるリスクがあると思っています。

記事にもあるように、そうはいってもインデックス運用が拡大すると本来はアクティブ運用の収益チャンスが増えるはずですが、やはりここで市場をゆがめたのが日銀のETF買いだったと思います。本来は裁定が働くところをそれをブルドーザーで踏みつぶすような勢いで買い続けた結果、多くのロングショートやマーケットニュートラルなど裁定取引型のファンドが苦しみました。こうしたファンドがまさに良い企業と悪い企業の選別という機能を率先して果たしているだけに、こうした機能を低下させた罪は重いと思います。願わくは規制当局と金融政策当局とがきちんと連携を取り、長い視野に立って日本の資本市場や経済にポジティブなフィードバックをもたらす仕組みを構築していただきたいと願う次第です。

ようやく、金利の上昇の兆しがあり、もしかしたら異次元の金融緩和の時代が終わろうとしているかもしれない中で、記事にもあるように来年はアクティブ運用がリターンで注目を浴びることを期待したいと思います。もちろん、繰り返しになりますが同時に「アクティブ運用が高い信託報酬に見合ったリターンを上げられるか。長期運用に耐える運用哲学を有しているのか。来年はアクティブ運用の復活に向けて運用会社の真価が問われる」年になると思います。

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