「投資の不都合な真実…日本人が盲信している「長期投資・分散投資なら安心」は大間違いである」は大間違いである
「投資の不都合な真実…日本人が盲信している「長期投資・分散投資なら安心」は大間違いである」
某「経済ジャーナリスト」様がプレジデントオンライン上に書かれたコラムのタイトルです(ヤフーニュースから転載させていただきました)。
この方はテレビなどでも時々出ているようですが、ここまで平気で知りもしないし調べもしないでうそを吐かれると、関係者としてはちゃんと言っておかなければと思いますね。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c022e83f0f9b35f2e33c765dbf88f11401401ba8?page=1
一つ一つ間違いを指摘していきます。
まずこのタイトル。そもそも「長期投資・分散投資なら安心」ということを「盲信」しているというのはどこから見つけられた事実なんでしょうか?最近は確かに多くの人が長期投資や分散投資の効果をリテラシー向上の結果として学んできています。盲信ではありません。しかも「安心」であるかどうかはあまり語られているように思いません。リスクはあっても長期投資が「有効」であることへの認識が高まっているだけだと思います。まあタイトルはある程度過激にしないと人々の目を引き付けないという、メディア独特の考えはあるにせよ、これはちょっとゆがめすぎでしょう。
次に
「金融庁のホームページを見ると、金融商品を長期で投資していけば、将来お金に困ることはないというような書きっぷりです」
とありますが、すみません、確かに金融庁はそういう長期投資や積立型投資を積極的に勧めているのは事実ですが、「将来もお金に困ることはない」なんてどこから読み取れるのでしょうか?一般の運用会社がそんなことお客さんに断言したり誤認を与えたりするような物言いをしたらそれこそ金融庁さんから叱られます。その大元の金融庁さんはそのようなことを言わないと思うので、どこか「将来もお金に困らない」といった受け止め方ができる表現があれば教えてもらいたいものです。もちろん老後資金をしっかりと準備するために必要だということは言っていますが、それと「お金に困らない」といういい方との間には大きなギャップがあると思います。
「投資は、今ではなく将来を予想してやるものですが、1年後の状況はなんとなく予想できても、30年後の経済がどうなっているのかなどを予想できる人は、たぶん1人もいないのではないかと思います」
こうも書いておられます。
「「投資」では、3カ月くらいの短期で利益を追っていくことのほうが正しいのです。なぜなら、めまぐるしく変わる経済状況の中では、20年先、30年先のことなど誰も予測できないからです」
30年などの長期の将来予想ができないから短期投資、という発想も本来は逆です。短期こそ予測が難しいのですが、例えば過去の米国株の動きなどを見れば長期ではきちんと右肩上がりで上昇しています。戦争や様々な社会変化を乗り越えて、(資本主義国であり続ける限り)特に株式価値の創出主体である企業が不断の努力で株主たちの期待に応えようとします。あるいみ、そういう社会で働いている良識ある人々の努力が長期的には右肩上がりの経済を実現させているのであり、その結果が右肩上がりの株価になってきたということまで否定されますか?もしそうだとしたら高等遊民のような経済ジャーナリスト様の高尚な市場経済理論をお聞かせいただきたいと思っています。
「「投資のプロ」と言われる人でも、「30年後にはこうなる」などということがわかる人はまずいません。」
当たり前です。しかしそこからどうして、
「みなさんが「長期投資の金融商品」と言われて買う投資信託を、長期投資という視点から運用しているファンドマネジャーなど、一人もいないと言っても過言ではないでしょう。」
というヒルサイズ級の飛躍した発言が登場するのでしょうか?このことは運用業界あるいは真剣に長期運用に携わっている会社やマネージャーに対する最大の冒涜です。もっといえばこの「経済ジャーナリスト」様は様々な優良な長期投資ファンドのことなど知りもしないし調べもしないで、当然そういった人にインタビューなどもせずこういった記事を書いておられるのだろうと思います。具体名は上げませんがパッと思いつくだけで長期的な企業価値向上を目指してしっかりと企業の人々と向き合いつつ投資を行っている、そして優れた実績を上げ続けている(そう、上げ続けているのです)会社や人々を多く知っています。というかそういう人々の方が多数派でしょう。もちろん事実としては収益予想などはせいぜい5年先ぐらいしかたてられないとしても「長期投資という視点から運用しているファンドマネジャーなど一人もいない」というのはさすがに言いすぎでしょう。謝ってほしい。
次。ファンドマネジャーが短期志向であることを説明しようとして
「なぜなら、ほとんどのファンドマネジャーは、3カ月ごとに運用成績が評価されます。まれに6カ月のケースもありますが、その運用成績の評価が悪ければ、外資系の会社などはすぐにクビにされます」
と書いていますが、そんなね、短期の運用成績だけで報酬払ったりするのはヘッジファンドぐらいのもので、多くの運用会社はもっと長期的視点に立って、さらにいえば運用者としての経験値をしっかりと長期的に育成していくという視点で評価しています。まあ運用成績によってボーナスが出たりでなかったり額が変化したりというのはどこの会社でもあると思いますが、それ以外にいわゆる定性面もしっかりとみて、ちゃんとまじめに調査したり投資機会を発見したりできる能力の養成に努めています。先ほど述べたヘッジファンドのようなところで成果だけを求めて高給で採用されるケースでは非常に短期で首になるケースもあるでしょうが、運用のスキルは持って生まれたものもあるとは思いますが、経験によって多少は育成されるので、特に国内の会社で普通のファンドの運用者が6か月で首になることはありません。逆にそういう会社があるとしたら長期投資の年金のお客様などからは疑いの目で見られるでしょう。
次にこの経済ジャーナリスト様が疑問を呈しているのは「分散投資」です。一応は分散投資が基本中の基本だということは認めつつも、ほら、リーマンショックがあったじゃないか、相関が1に近づいてしまって分散が効かなかったことがあったじゃないか、という疑問を呈しています。
勿論プロの間ではこうしたことは全く議論になりません。仮にリーマンショックがあったとしてもそれ以外のほとんどの期間において分散効果は発揮できているからです。リーマンのような特別な時期を強調して分散投資そのものを否定するのはちょっと行きすぎでしょう。
ここで経済ジャーナリスト様の議論は面白い方向に転換します。
「もちろん、多額の資産を持っていて機敏に運用している人は、状況次第でさまざまな金融商品に資産を移しながら、分散投資で損を減らしています。
たとえば、10億円くらいの資産を持っている人なら、さまざまなものを運用できる資産があり、機敏に動けるファンドマネジャーがついています。こういう人は、最低でも5000万円くらいの手数料をファンドマネジャーに支払っています。」
10億円持っている人なら様々なものに分散できるし「機敏に動けるファンドマネジャーついている」というのです。あ、やはり基本が分散投資だということは認めるわけ・・・。それなら初めから分散投資そのものに疑問を呈さねば良いのに。10億円持っている人はファンドマネジャーに最低でも5000万円つまり500ベーシス(5%)も払っているそうです。年率?まさかね。そういうお客さんがいたらぜひ紹介してもらいたいですが、毎年それだけ払うということは当然それをはるかに超えるリターンを上げなければならないと思うのですが大丈夫でしょうか?累計だとしたら、一体何年分の手数料なのかはっきり書いてもらわないとこの5000万円という数字がただの脅しとかハッタリでしかなくなってしまいますので、文章としてはかなり稚拙です。(いーっぱい本書いていらっしゃるのにねぇ)。
で、分散投資がダメという理屈は100万円ぐらいのお金しか投資できない人の話だということが明らかになります。
「では、投資資金が100万円くらいという人は、どうでしょう。
分散投資するほどの財産はないので、手頃な「投資信託」を買うことになります」
おー、また飛躍しました。二本目のヒルサイズ級の大ジャンプです。個人向け国債もありますし、個別株もあります。まあ投信が一般的かもしれませんが、必ずしもそうではないと思います。まあ投信に突っ込むとおっしゃるのであればそうしておきましょう。でもやっぱり分散投資の意味自体は認めるわけですね・・・
「投資信託は、金融機関にとってはおいしい金融商品です。なぜなら売る時と買う時以外にも、持っているあいだはずっと「信託報酬」という手数料が入るから。買った人がその投資信託で損しようが得しようが、金融機関は確実に儲かる。」
さっきまで分散投資はダメだ、という話からいきなり投信への攻撃に移ったようです。
投資信託が信託報酬という手数料を毎年取られる商品であることは間違いありません。ただ、インデックス投信などは極めて厳しい手数料の切り下げ競争にさらされています。その恩恵はもっぱら(この「経済ジャーナリスト」様のお嫌いな長期投資のための仕組みである)iDeCoやNisaで受けられます。こうしたスキームに採用されるためにはあまたの同様な投信の中から選ばれるために、手数料競争となっているケースが多い。特にインデックス投信はそうです。運用会社の方はルールにのっとってインデックスにトラックするために様々な設備投資や人材の配置を行ったり報告書の作成をおこなうので、こういう運用でもコストはかかります。販売会社も様々な資料作成の手間がかかります。お金が入るのは間違いないですが、現在は非常に安い報酬(言い方は悪いですが、経済ジャーナリスト様の間違いだらけの雑文に支払われるよりはもっと真っ当な労働の対価です)で多くの人が仕事をしています。十把一からげにディスるのはやめていただきたい。
もう一点、投資信託でも分散投資できるバランス型、ターゲットイヤー型その他分散の効果を生かそうとする商品はいくらでもあります。お金持ちでなければ分散投資できないから投信、という論の立て方の中ですでに概念的な混乱が見られます。また投信は手数料が常に発生するから駄目だ、という以前に現金のリターンとそれ以外の商品のリターンとを比べてみてはいかがでしょうか。
「分散投資でリスクを減らすということは、投資の世界では、同時にリターンも減るということになります。リスクだけは分散投資で減らして、リターンはそのままなどということはありえません。」
まあこれはその通りでしょうが、それでも、一般的に分散投資が勧められるのは、投資効率(リスクリターン)の改善効果がみられるからでして、その辺は投資を学んだ人なら有効フロンティアといった概念で理解されているはずです。この経済ジャーナリスト様はたぶんその辺もしっかりと書いておく必要があると思います。分散投資が理論的に全く意味がないという新理論を本気で提唱されるなら別ですが、その割には議論が雑なので。
ここまで読んできて大体理解できたのは、この経済ジャーナリスト様のこのコラムは投資資金100万円程度の人々を対象に書いているということです。まあその位の資金でも分散投資は可能だし、第一そもそも現状のまとまったお金がないからこそ将来に向けての「積立」が重要なんじゃないか、という言い方はできるのですが、この方の最終的な答えは「現金保有」です。そして爪に火を点すようにお金を貯めて住宅ローンなどの借金を返済することを勧めています。
なーんだ、要するにこのコラムは手元資金が100万円ほどで住宅ローンなどの借金がある人に、まずは借金を返してから投資しようね、というそれだけのことを言いたかっただけのようです。まあなけなしの財産ならリスク資産に宛てるのは躊躇するというのはそれはそれでわかります。それならそれらしいタイトル付ければいいのに。タイトルに引っ張られて根拠なく運用のプロをディスったりするので、大上段に振りかぶった太刀の重みでひっくり返ったような無様な文章になってしまっています。
最後に、なぜこの文章が雑に見えてしまうか、というと、アドバイスを行っているにもかかわらず、対象者の年齢の要素が全く入っていないからだと思います。こういうアドバイスをする際には相手のライフプランとかに沿ったリスク許容度とかそういうものが重要な判断要素になるのですが、そういった要素を捨象して語っている。まああまり有効なアドバイスにはなりづらいので、このコラムそのものが非常に無駄な内容です。こういう内容のものを掲載してしまう雑誌の見識も疑われるところでしょう。
某「経済ジャーナリスト」様がプレジデントオンライン上に書かれたコラムのタイトルです(ヤフーニュースから転載させていただきました)。
この方はテレビなどでも時々出ているようですが、ここまで平気で知りもしないし調べもしないでうそを吐かれると、関係者としてはちゃんと言っておかなければと思いますね。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c022e83f0f9b35f2e33c765dbf88f11401401ba8?page=1
一つ一つ間違いを指摘していきます。
まずこのタイトル。そもそも「長期投資・分散投資なら安心」ということを「盲信」しているというのはどこから見つけられた事実なんでしょうか?最近は確かに多くの人が長期投資や分散投資の効果をリテラシー向上の結果として学んできています。盲信ではありません。しかも「安心」であるかどうかはあまり語られているように思いません。リスクはあっても長期投資が「有効」であることへの認識が高まっているだけだと思います。まあタイトルはある程度過激にしないと人々の目を引き付けないという、メディア独特の考えはあるにせよ、これはちょっとゆがめすぎでしょう。
次に
「金融庁のホームページを見ると、金融商品を長期で投資していけば、将来お金に困ることはないというような書きっぷりです」
とありますが、すみません、確かに金融庁はそういう長期投資や積立型投資を積極的に勧めているのは事実ですが、「将来もお金に困ることはない」なんてどこから読み取れるのでしょうか?一般の運用会社がそんなことお客さんに断言したり誤認を与えたりするような物言いをしたらそれこそ金融庁さんから叱られます。その大元の金融庁さんはそのようなことを言わないと思うので、どこか「将来もお金に困らない」といった受け止め方ができる表現があれば教えてもらいたいものです。もちろん老後資金をしっかりと準備するために必要だということは言っていますが、それと「お金に困らない」といういい方との間には大きなギャップがあると思います。
「投資は、今ではなく将来を予想してやるものですが、1年後の状況はなんとなく予想できても、30年後の経済がどうなっているのかなどを予想できる人は、たぶん1人もいないのではないかと思います」
こうも書いておられます。
「「投資」では、3カ月くらいの短期で利益を追っていくことのほうが正しいのです。なぜなら、めまぐるしく変わる経済状況の中では、20年先、30年先のことなど誰も予測できないからです」
30年などの長期の将来予想ができないから短期投資、という発想も本来は逆です。短期こそ予測が難しいのですが、例えば過去の米国株の動きなどを見れば長期ではきちんと右肩上がりで上昇しています。戦争や様々な社会変化を乗り越えて、(資本主義国であり続ける限り)特に株式価値の創出主体である企業が不断の努力で株主たちの期待に応えようとします。あるいみ、そういう社会で働いている良識ある人々の努力が長期的には右肩上がりの経済を実現させているのであり、その結果が右肩上がりの株価になってきたということまで否定されますか?もしそうだとしたら高等遊民のような経済ジャーナリスト様の高尚な市場経済理論をお聞かせいただきたいと思っています。
「「投資のプロ」と言われる人でも、「30年後にはこうなる」などということがわかる人はまずいません。」
当たり前です。しかしそこからどうして、
「みなさんが「長期投資の金融商品」と言われて買う投資信託を、長期投資という視点から運用しているファンドマネジャーなど、一人もいないと言っても過言ではないでしょう。」
というヒルサイズ級の飛躍した発言が登場するのでしょうか?このことは運用業界あるいは真剣に長期運用に携わっている会社やマネージャーに対する最大の冒涜です。もっといえばこの「経済ジャーナリスト」様は様々な優良な長期投資ファンドのことなど知りもしないし調べもしないで、当然そういった人にインタビューなどもせずこういった記事を書いておられるのだろうと思います。具体名は上げませんがパッと思いつくだけで長期的な企業価値向上を目指してしっかりと企業の人々と向き合いつつ投資を行っている、そして優れた実績を上げ続けている(そう、上げ続けているのです)会社や人々を多く知っています。というかそういう人々の方が多数派でしょう。もちろん事実としては収益予想などはせいぜい5年先ぐらいしかたてられないとしても「長期投資という視点から運用しているファンドマネジャーなど一人もいない」というのはさすがに言いすぎでしょう。謝ってほしい。
次。ファンドマネジャーが短期志向であることを説明しようとして
「なぜなら、ほとんどのファンドマネジャーは、3カ月ごとに運用成績が評価されます。まれに6カ月のケースもありますが、その運用成績の評価が悪ければ、外資系の会社などはすぐにクビにされます」
と書いていますが、そんなね、短期の運用成績だけで報酬払ったりするのはヘッジファンドぐらいのもので、多くの運用会社はもっと長期的視点に立って、さらにいえば運用者としての経験値をしっかりと長期的に育成していくという視点で評価しています。まあ運用成績によってボーナスが出たりでなかったり額が変化したりというのはどこの会社でもあると思いますが、それ以外にいわゆる定性面もしっかりとみて、ちゃんとまじめに調査したり投資機会を発見したりできる能力の養成に努めています。先ほど述べたヘッジファンドのようなところで成果だけを求めて高給で採用されるケースでは非常に短期で首になるケースもあるでしょうが、運用のスキルは持って生まれたものもあるとは思いますが、経験によって多少は育成されるので、特に国内の会社で普通のファンドの運用者が6か月で首になることはありません。逆にそういう会社があるとしたら長期投資の年金のお客様などからは疑いの目で見られるでしょう。
次にこの経済ジャーナリスト様が疑問を呈しているのは「分散投資」です。一応は分散投資が基本中の基本だということは認めつつも、ほら、リーマンショックがあったじゃないか、相関が1に近づいてしまって分散が効かなかったことがあったじゃないか、という疑問を呈しています。
勿論プロの間ではこうしたことは全く議論になりません。仮にリーマンショックがあったとしてもそれ以外のほとんどの期間において分散効果は発揮できているからです。リーマンのような特別な時期を強調して分散投資そのものを否定するのはちょっと行きすぎでしょう。
ここで経済ジャーナリスト様の議論は面白い方向に転換します。
「もちろん、多額の資産を持っていて機敏に運用している人は、状況次第でさまざまな金融商品に資産を移しながら、分散投資で損を減らしています。
たとえば、10億円くらいの資産を持っている人なら、さまざまなものを運用できる資産があり、機敏に動けるファンドマネジャーがついています。こういう人は、最低でも5000万円くらいの手数料をファンドマネジャーに支払っています。」
10億円持っている人なら様々なものに分散できるし「機敏に動けるファンドマネジャーついている」というのです。あ、やはり基本が分散投資だということは認めるわけ・・・。それなら初めから分散投資そのものに疑問を呈さねば良いのに。10億円持っている人はファンドマネジャーに最低でも5000万円つまり500ベーシス(5%)も払っているそうです。年率?まさかね。そういうお客さんがいたらぜひ紹介してもらいたいですが、毎年それだけ払うということは当然それをはるかに超えるリターンを上げなければならないと思うのですが大丈夫でしょうか?累計だとしたら、一体何年分の手数料なのかはっきり書いてもらわないとこの5000万円という数字がただの脅しとかハッタリでしかなくなってしまいますので、文章としてはかなり稚拙です。(いーっぱい本書いていらっしゃるのにねぇ)。
で、分散投資がダメという理屈は100万円ぐらいのお金しか投資できない人の話だということが明らかになります。
「では、投資資金が100万円くらいという人は、どうでしょう。
分散投資するほどの財産はないので、手頃な「投資信託」を買うことになります」
おー、また飛躍しました。二本目のヒルサイズ級の大ジャンプです。個人向け国債もありますし、個別株もあります。まあ投信が一般的かもしれませんが、必ずしもそうではないと思います。まあ投信に突っ込むとおっしゃるのであればそうしておきましょう。でもやっぱり分散投資の意味自体は認めるわけですね・・・
「投資信託は、金融機関にとってはおいしい金融商品です。なぜなら売る時と買う時以外にも、持っているあいだはずっと「信託報酬」という手数料が入るから。買った人がその投資信託で損しようが得しようが、金融機関は確実に儲かる。」
さっきまで分散投資はダメだ、という話からいきなり投信への攻撃に移ったようです。
投資信託が信託報酬という手数料を毎年取られる商品であることは間違いありません。ただ、インデックス投信などは極めて厳しい手数料の切り下げ競争にさらされています。その恩恵はもっぱら(この「経済ジャーナリスト」様のお嫌いな長期投資のための仕組みである)iDeCoやNisaで受けられます。こうしたスキームに採用されるためにはあまたの同様な投信の中から選ばれるために、手数料競争となっているケースが多い。特にインデックス投信はそうです。運用会社の方はルールにのっとってインデックスにトラックするために様々な設備投資や人材の配置を行ったり報告書の作成をおこなうので、こういう運用でもコストはかかります。販売会社も様々な資料作成の手間がかかります。お金が入るのは間違いないですが、現在は非常に安い報酬(言い方は悪いですが、経済ジャーナリスト様の間違いだらけの雑文に支払われるよりはもっと真っ当な労働の対価です)で多くの人が仕事をしています。十把一からげにディスるのはやめていただきたい。
もう一点、投資信託でも分散投資できるバランス型、ターゲットイヤー型その他分散の効果を生かそうとする商品はいくらでもあります。お金持ちでなければ分散投資できないから投信、という論の立て方の中ですでに概念的な混乱が見られます。また投信は手数料が常に発生するから駄目だ、という以前に現金のリターンとそれ以外の商品のリターンとを比べてみてはいかがでしょうか。
「分散投資でリスクを減らすということは、投資の世界では、同時にリターンも減るということになります。リスクだけは分散投資で減らして、リターンはそのままなどということはありえません。」
まあこれはその通りでしょうが、それでも、一般的に分散投資が勧められるのは、投資効率(リスクリターン)の改善効果がみられるからでして、その辺は投資を学んだ人なら有効フロンティアといった概念で理解されているはずです。この経済ジャーナリスト様はたぶんその辺もしっかりと書いておく必要があると思います。分散投資が理論的に全く意味がないという新理論を本気で提唱されるなら別ですが、その割には議論が雑なので。
ここまで読んできて大体理解できたのは、この経済ジャーナリスト様のこのコラムは投資資金100万円程度の人々を対象に書いているということです。まあその位の資金でも分散投資は可能だし、第一そもそも現状のまとまったお金がないからこそ将来に向けての「積立」が重要なんじゃないか、という言い方はできるのですが、この方の最終的な答えは「現金保有」です。そして爪に火を点すようにお金を貯めて住宅ローンなどの借金を返済することを勧めています。
なーんだ、要するにこのコラムは手元資金が100万円ほどで住宅ローンなどの借金がある人に、まずは借金を返してから投資しようね、というそれだけのことを言いたかっただけのようです。まあなけなしの財産ならリスク資産に宛てるのは躊躇するというのはそれはそれでわかります。それならそれらしいタイトル付ければいいのに。タイトルに引っ張られて根拠なく運用のプロをディスったりするので、大上段に振りかぶった太刀の重みでひっくり返ったような無様な文章になってしまっています。
最後に、なぜこの文章が雑に見えてしまうか、というと、アドバイスを行っているにもかかわらず、対象者の年齢の要素が全く入っていないからだと思います。こういうアドバイスをする際には相手のライフプランとかに沿ったリスク許容度とかそういうものが重要な判断要素になるのですが、そういった要素を捨象して語っている。まああまり有効なアドバイスにはなりづらいので、このコラムそのものが非常に無駄な内容です。こういう内容のものを掲載してしまう雑誌の見識も疑われるところでしょう。
この記事へのコメント
私も過去運用に携わっておりましたが、分散投資は運用の根幹だと実感しております。
知人からアドバイスを求められても、時間分散・資産分散・明確分散を考えて運用して下さいと答えています。
GPIFも分散投資を粛々と実行して、それなりの結果を出しています。
こう言う妄言を吐く人物は、本当に害悪と思います。