日本企業の「コーポレート・ガバナンス」


今週号の週刊ダイヤモンド誌(2021/5/22)は株式投資の特集だったが、その中で元シティグループ証券のストラテジスト(現一橋大学大学院特任教授)の藤田勉氏が書かれていた記事が興味深かった。

「東芝の経営混乱で露呈した日本のガバナンス改革の限界」と題した記事は、日本のコーポレート・ガバナンス・コード」(CGコード)が「社外取締役の数などの形式要件を重視」しておりそれに沿った形で企業側の態勢づくりは進んだものの、結局のところ日本企業の成長力や収益力は低いままであることを指摘している。

まあ、日本におけるCGコードなどは割と最近の動きであって、もう少し時間をおいて評価すべきかもしれないとも思うが、それでも「CGコードは英国発祥であるが、英国企業低収益、低成長であり、経営者の高額報酬などガバナンス上の問題も多い(米国にCGコードはない)。」という指摘はなかなか厳しい。金融庁がこのCGコードと「車の両輪」と位置付ける「スチュワードシップ・コード」(SSコード)は、企業に対して「建設的な対話」によって投資家が物申していき、それによって企業の成長や収益性(最近ではESGを通じた成長なども含む)を押し上げていきましょうという思想だが、藤田さんはこれについても「筆者は元ファンドマネージャーだが、運用者の言うことを聞くような経営者がいる企業の株を買おうとは思わない。」「ソフトバンクGやファーストリテイリングが急成長してきたのは、社外取締役や株主との対話の数が多かったからではなく、経営者の孫正義氏や柳井正氏の能力が優れているからではないだろうか」と手厳しい。

ワタクシとしても、立場上全面的に同意するわけにはいかないものの、確かに過去数年の間にあまり好ましくない企業行動を見せている企業については、外形的な社外取締役の数あるいは委員会設置会社であるなど、教科書的に優れているところが多いような気がする。ガバナンスについて形から入ることも一つのやり方だと思うが、やはり最後は内部者(多くの場合オーナー)がしっかりと「経営哲学」に基づいて先を見据えた経営をやることが長期的な好成績につながるような気がする。

たまたまであるが、今週の週刊東洋経済には「東芝」の特集が組まれていた。そのなかで最近不祥事があったいくつかの企業の社外取締役、社外監査役のスコアカードが(東洋経済による勝手採点だが)つけられていて、完全に合格点をもらえた人は一人もいなかった。要するにいずれの会社も不祥事を止められなかったわけだから当然だが、錚々たるメンバーが名を連ねていてもやはり社外重役などによる監視には限界があることを思い知らされる。

藤田氏は結論として「「会社の持続的な成長」を目指すには、形式要件を満たすのではなく、多くのベンチャー企業を育成し、優れた経営者を輩出するような制度設計をすることが有効である。」と結んでいる。まあ米国と日本とを一緒くたにはできないと思うが、形式基準があまり役に立たないことについては完全に同意する。ただ、運用を業としていると、顧客や役所との関係ではなかなかそう言い放てないのが現実でもある。

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