森流の幕引き
森元首相(五輪大会組織委員長)の女性蔑視発現やら軽率な言動がネットで話題になっています。個人的な感想としては、これだけ腹芸のできる人はないと思うので、今回も一種の「自爆テロ」で自分の責任で、こじれた東京オリンピックの中止への道筋をつけようとしたのではないかと思います。
今回のは、だれがどう見ても露骨な女性蔑視発言です。半分のアスリートが女性であるオリンピックを開催する側の責任者の発言とはとても思えません。ただ、これが本当の意味でのうっかり失言かどうかはちょっと疑問です。さすがにこのレベルのことを言っていいかどうかの判断がつかないほどの人ではないと考えています。謝罪会見も逆切れ気味だと報じられていて、さらに印象が悪くなったと言われていますが、皆さん、あれも「演技」ですからね(たぶん・・・)。だって、経済レベルで世界第三位の大国の首相を務めた人です、イット革命とか言って暗い雰囲気の中でいろいろ国民を楽しませてくれた人です。ああいうタイプのひとは大体「タヌキ」です。本音など人前でめったに暴露しませんからね。
今回の発言はオリンピックの精神を踏みにじるものとして、海外からも糾弾されています。IOCも問題とせざるを得ない。この勢いでIOC側から中止を言い出してもらえば非常に助かります。日本側から中止を言い出せばキャンセル料がかかるが、IOCから言い出してもらえばたぶんかからないでしょう。仮に、そうならないとしても、日本国内で非難轟轟となり、国民世論の勢いで中止となるとすると、キャンセル料が発生してもそのこと自体を咎める人はいなくなるでしょう。森さんひとりが悪者になればいいのです。キャンセル料を森さんに請求できる根拠もなさそうです。
森さんの芸風は、小泉解散の前夜の「ひからびたチーズ」事件でも遺憾なく発揮されています。つまり、面白発言で流れを確定させる。小泉解散のときも派閥の長として影響力のある立場だった。今回も組織委員長として、その発言がどういう影響力を持つかを十分に理解したうえでのご発言だったとおもわれます。タイミングとしても、聖火リレーが開始されてからではもはや中止を言い出しづらいなかで、中止するとしたら今月ぐらいからきちんとコンセンサスを形成していく必要がある。今回の発言でさらに重要なことは、選手を含めた関係者全体への挑戦的発言だったということで、中止の流れを決定づけるには、選手やボランティアなども含めた皆さんが「もうやってらんねぇ」とおもってギブアップしてくれる必要があります。それを見事にやってのけたわけです。もともと東京でのオリンピックには全く賛同できなかったワタクシとしては(そもそもオリンピックそのものを廃止すべきだと思っていますが)、快哉を送りたい・・・うっ、なんか後頭部が・・・。
そもそも、招致当時関係者が何を勘違いしたのか知りませんが、日本でオリンピックなどやっても日本における傾向的な経済の流れは変えることはできません。それを変えることができるのは(本当にいいことか悪いことかは別として)人口動態の変化と、人々のマインドの変化、リスクテイクへの意欲であって、国の施策として本当に求められるのは、そういうことを後押しする政策です。オリンピックのために本当にこれまで無駄なお金をたくさん使ってしまいました。オリンピックはせいぜい発展途上国が成長へのスプリングボードとして使うべきものです。先進国がやろうとするとどうしても商業主義的にならざるを得なくなります。その結果として、7月という猛暑の時期に東京でやるとか、もうわけのわからないことが決められてしまう。そりゃ自国開催となれば、アスリートとしては若干有利になるでしょうから、「よしっ」とモチベーションが上がるのはそれはよく理解できます。ただ、今やオリンピックとはそういったアスリートの思惑をこえたところで、商業や政治家の思惑や功名心、そしてIOCの特権階級の自己満足を満たすためのものという要素が非常に強くなってしまっている。競技者としての優劣を決めるのであれば、世界選手権を競技ごとに開けばいいのです。オリンピックやるなら、本来はボクシング対空手とか、ラグビー対サッカーとか異種競技対決みたいなのがないと意味がないわけです。それを「祭典」とかこだわって4年に一度だけもったいつけてやるから、ピークで出場できず悔しい思いをする選手がでて、それが下手をするとまた異なる国民の間の心の隙間を広げたりするわけです。平和の祭典とか言いつつ、戦争のやめられない大国や、核兵器保持に熱心な独裁国や、人権侵害やり放題の某セントラルフラワーピープルズリパブリックとか、なんで出てくるんだと思います。そういう国を原則排除し、「もし参加したかったらそういうこときっちり辞めてから来いや!」というのが本来のオリンピックの在り方だと思っています。(まあ本来は思想的には前後逆でしょうが、現実にはそういう国々を増長させているだけなので)。
ともあれ、森さんの発言で東京五輪中止の流れはほぼ決まったと思われます(違ったらごめんなさい)。紆余曲折を経たものの、最後に責任をもって自己犠牲で幕引きを図ろうとした森さんの勇気と英断に拍手を送りたいと思います(違)。てか、そうとでも思わないとやってられないくらい、この発言は筋が悪く衝撃的なものだと思います。
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