スイス中銀(SNB)からのサプライズ
すでにご存じのとおり、1月15日にスイス中央銀行は対ユーロで1ユーロ=1.2スイスフランといういわゆるMinimum Exchange Rate(上限レート)を撤廃し、それまで行ってきた無制限介入を停止することを発表しました。同時に政策金利(Sight Deposit Rate=
中央銀行当座預金みたいなものへの付利金利)のレンジを+0.25~-0.75%(中央値=-0.25%)から-0.25~-1.25(中央値=-0.75)に引き下げ(チャージしているから引き上げっていうのかな?)ました。
昨夜モニターを見ていて115円ぐらいだったスイスフランが150円とかに変わっていて、「あれ、また15(じゅうご)と50(ごじゅう)の入力間違いとか子供みたいなミスしやがって」と一瞬思ったのですが、よく見るとこういうことになっていて、久しぶりに爆弾投下という感じです。まあ最近世界中の中央銀行がいろいろな爆弾を投下してくれるのであちこちマーケットが焼野原となっていて、いよいよ本土決戦ですか、みたいな雰囲気が漂ってきました。まあこの中で商売していくには本当に中銀と刺し違えるぐらいの覚悟が必要ですが、円債のマーケットなどではすでに果敢に向かっていったヘッジファンドの勇士たちの屍がイールドカーブの平原上に累々となっている状況で、もはやこんなもの見せてもらってもみんな塹壕からは出られない状況というといいすぎですかそうですか。
この時期になぜこういうことをしたのか、ワタクシなりに少し考えてみました。あまりものを知らないで書いているので、読者の方々がお知恵をお持ちならぜひお聞かせ願いたいのですが、たとえば、まず22日のECB、25日のギリシャ総選挙など欧州というかユーロの将来に関して結構なイベントがあります。今のところECBで量的緩和をやるかもしれない(個人的にはギリシャ選挙の結果を見てからでなければ難しいと思いますが)との説もあり、仮にちょうど1週間後の22日にECBが国債を使った量的緩和を決めた場合ユーロはますます売られ、現状のルールのままですとさらにユーロ買いフラン売りを強いられることとなります。ECBのそうした決定が不可避だと考えるなら、そういう事態に陥るのは所詮は時期の問題であって、残るは、SNBというかスイスが「これからどうしたいのか」という問題です。
介入を続ければ、外貨準備にユーロがたまり続けることになります。そもそもユーロってどうなのよ、というネガティブなイメージが広まりつつある中で、もう「ユーロはいらん」と考えても不思議ではありません。確かに貿易相手国としてはユーロ圏だけで輸出金額の68%、輸入金額の47%を占めているので、ユーロの外貨準備が多いことは別に不思議ではありませんが、それにしても「対ユーロ」でのペッグをルール化したままではコントロールすらままならない。ということで、ユーロを買うのをやめる、というのはまあありだと思います。
もともと国内産業の競争力を維持するために片面的ペッグを行ったと思われるのですが、実は、そんなに気にする必要がなくなっているということも今回の背景にあるかもしれません。2011年当時はコモディティの上昇が大きかったと思います。WTI先物ではたとえば115ドル近辺とか、CRB指数も相当急騰していた時代だったと思います。
ところが昨今、原油は急落し、一次産品価格も低迷しつつある中、つまり世界的にデフレを生む要素が蔓延している中で、スイスの国際収支構造はデフレの輸入というデメリットを乗り越えるぐらいのメリットを大きく受けやすい構造になっているのかもしれません。
たとえば、2012年の輸出入の品目を見てみると、一番大きなのは化学(医薬品含む)です。これは圧倒的な輸出超過です。まあスイスの看板産業ですからね。もう一つ輸出超過が目立つのは精密機械、時計、装身具等。これもスイスの看板産業といえますね。いずれも輸入額の倍ぐらい輸出している。で、この二つについてしいて特徴的な面を上げるとすると、「価格感応度が低いかもしれない」ということです。つまり価格で競争するのではなく物の個性で競争するものではないか、ということ。薬などはもう「効くか効かないか」の世界で、命がかかっていれば高価な医薬品を使うわけですし、仮に保険制度が使えるのであれば価格にかかわりなく「効くもの」が売れる。時計や装身具に至ってはもう言うまでもないでしょう。要するにスイスの得意分野というのは実はフラン高の影響を受けづらいのではないか、と思われるのです。最近お得意様が金に糸目をつけないアジアや産油国だったということもあるのかもしれません。
一方でスイスは農・林・水産物や輸送用機器(自動車を含む)についてはかなりの輸入超過です。自動車産業はないし農業は大規模にできないし海もないからこれは当然です。しかし、こういう日常的なものについて為替は結構効いてくる。いうなればフラン高にすればインフレにはならないから住民は必要なものをこれまでより安く入手できる。そしてスイスはエネルギーの輸入が大きく輸入額の11%を占めておりいうまでもなく大幅な輸入超過である。昨今のエネルギー価格の下落と国際商品市況の下落のメリットにくわえ、自国通貨高という、国民生活上は「トリプルメリット」となる可能性があるということです。
もちろん、一般的にはデフレの輸入ということになるのだけれど、ここで興味があるのはこういう決断の背景にもしかしたら『「デフレ」って本当に常ににいけないの?』『いいデフレはあるんじゃないの?』という思想があるかもしれないとふと思ってしまいました。さらにその先にあるのは「成長」とはなにか、という哲学的な問いだったりします。
経済学者の方がみたらこんな思い付きは一笑に付されるどころか、相当バカにされるような気がしますが、ただ、現実に起こっていることはすでに経済学の教科書の領域をはるかに超えた世界なので、いろいろ考えてみる価値はありそうに思います。
それよりも何よりも「ユーロにキレた」というのがまあ本当のところだとは思いますが。
中央銀行当座預金みたいなものへの付利金利)のレンジを+0.25~-0.75%(中央値=-0.25%)から-0.25~-1.25(中央値=-0.75)に引き下げ(チャージしているから引き上げっていうのかな?)ました。
昨夜モニターを見ていて115円ぐらいだったスイスフランが150円とかに変わっていて、「あれ、また15(じゅうご)と50(ごじゅう)の入力間違いとか子供みたいなミスしやがって」と一瞬思ったのですが、よく見るとこういうことになっていて、久しぶりに爆弾投下という感じです。まあ最近世界中の中央銀行がいろいろな爆弾を投下してくれるのであちこちマーケットが焼野原となっていて、いよいよ本土決戦ですか、みたいな雰囲気が漂ってきました。まあこの中で商売していくには本当に中銀と刺し違えるぐらいの覚悟が必要ですが、円債のマーケットなどではすでに果敢に向かっていったヘッジファンドの勇士たちの屍がイールドカーブの平原上に累々となっている状況で、もはやこんなもの見せてもらってもみんな塹壕からは出られない状況というといいすぎですかそうですか。
この時期になぜこういうことをしたのか、ワタクシなりに少し考えてみました。あまりものを知らないで書いているので、読者の方々がお知恵をお持ちならぜひお聞かせ願いたいのですが、たとえば、まず22日のECB、25日のギリシャ総選挙など欧州というかユーロの将来に関して結構なイベントがあります。今のところECBで量的緩和をやるかもしれない(個人的にはギリシャ選挙の結果を見てからでなければ難しいと思いますが)との説もあり、仮にちょうど1週間後の22日にECBが国債を使った量的緩和を決めた場合ユーロはますます売られ、現状のルールのままですとさらにユーロ買いフラン売りを強いられることとなります。ECBのそうした決定が不可避だと考えるなら、そういう事態に陥るのは所詮は時期の問題であって、残るは、SNBというかスイスが「これからどうしたいのか」という問題です。
介入を続ければ、外貨準備にユーロがたまり続けることになります。そもそもユーロってどうなのよ、というネガティブなイメージが広まりつつある中で、もう「ユーロはいらん」と考えても不思議ではありません。確かに貿易相手国としてはユーロ圏だけで輸出金額の68%、輸入金額の47%を占めているので、ユーロの外貨準備が多いことは別に不思議ではありませんが、それにしても「対ユーロ」でのペッグをルール化したままではコントロールすらままならない。ということで、ユーロを買うのをやめる、というのはまあありだと思います。
もともと国内産業の競争力を維持するために片面的ペッグを行ったと思われるのですが、実は、そんなに気にする必要がなくなっているということも今回の背景にあるかもしれません。2011年当時はコモディティの上昇が大きかったと思います。WTI先物ではたとえば115ドル近辺とか、CRB指数も相当急騰していた時代だったと思います。
ところが昨今、原油は急落し、一次産品価格も低迷しつつある中、つまり世界的にデフレを生む要素が蔓延している中で、スイスの国際収支構造はデフレの輸入というデメリットを乗り越えるぐらいのメリットを大きく受けやすい構造になっているのかもしれません。
たとえば、2012年の輸出入の品目を見てみると、一番大きなのは化学(医薬品含む)です。これは圧倒的な輸出超過です。まあスイスの看板産業ですからね。もう一つ輸出超過が目立つのは精密機械、時計、装身具等。これもスイスの看板産業といえますね。いずれも輸入額の倍ぐらい輸出している。で、この二つについてしいて特徴的な面を上げるとすると、「価格感応度が低いかもしれない」ということです。つまり価格で競争するのではなく物の個性で競争するものではないか、ということ。薬などはもう「効くか効かないか」の世界で、命がかかっていれば高価な医薬品を使うわけですし、仮に保険制度が使えるのであれば価格にかかわりなく「効くもの」が売れる。時計や装身具に至ってはもう言うまでもないでしょう。要するにスイスの得意分野というのは実はフラン高の影響を受けづらいのではないか、と思われるのです。最近お得意様が金に糸目をつけないアジアや産油国だったということもあるのかもしれません。
一方でスイスは農・林・水産物や輸送用機器(自動車を含む)についてはかなりの輸入超過です。自動車産業はないし農業は大規模にできないし海もないからこれは当然です。しかし、こういう日常的なものについて為替は結構効いてくる。いうなればフラン高にすればインフレにはならないから住民は必要なものをこれまでより安く入手できる。そしてスイスはエネルギーの輸入が大きく輸入額の11%を占めておりいうまでもなく大幅な輸入超過である。昨今のエネルギー価格の下落と国際商品市況の下落のメリットにくわえ、自国通貨高という、国民生活上は「トリプルメリット」となる可能性があるということです。
もちろん、一般的にはデフレの輸入ということになるのだけれど、ここで興味があるのはこういう決断の背景にもしかしたら『「デフレ」って本当に常ににいけないの?』『いいデフレはあるんじゃないの?』という思想があるかもしれないとふと思ってしまいました。さらにその先にあるのは「成長」とはなにか、という哲学的な問いだったりします。
経済学者の方がみたらこんな思い付きは一笑に付されるどころか、相当バカにされるような気がしますが、ただ、現実に起こっていることはすでに経済学の教科書の領域をはるかに超えた世界なので、いろいろ考えてみる価値はありそうに思います。
それよりも何よりも「ユーロにキレた」というのがまあ本当のところだとは思いますが。
この記事へのコメント
最近、中央銀行リスクというか、金融システムの安定を守るべき中央銀行のBSに、市場リスクが飲み込まれていってる気がします。特に極東の国は、出口のないまま、どこまでも飲み込んでいきそうですが、いつ爆発するのかとても不安。
初めての投資家さん、どうもです。日本もいまは結構注目されていると思いますよ、少なくとも実体面では。
投資家さんどうもです。そういうテクニカルな動きはありでしょうね。
そういえば、リフレ派さんの「MB拡大でデフレ脱出」というのは金融自由化前の現物経済のころなら効果が十分見込めたんでしょうが、金融経済が現物経済のうん十倍もフローがあってさらに国際化によって系が閉じてないので、MBだけで対応というのは無理でしょう。はらださんが審議委員入りとかもう委員会の意味をなさなくて日本銀行と黒田さんと仲間たちというのでいいのでは?と思ってしまいます。